私たちの歴史
むかし、むかし、と言っても今から十数年前の1981年、広島の安古市(現在の古市地区)というところに、障がいのあるお子さんを育てる一人のお母さんがいらっしゃいました。みんなが大好きな長い夏休みなのに、このお母さんもその子どもも夏休みが大嫌いでした。と言うのも、夏休みになると学校が休みになるため、遠くの特別支援学校に通っているその子は友達と遊ぶことができないし、お母さんは、その子の遊び相手で一日中つきっきりにならなくてはならないからです。お母さんも子どももめちゃくちゃ憂鬱な日々が続くのでした…。
ある日、お母さんはふとひらめきました。
「そうだわっ!夏休みの間、同じようにつまらない思いをしている子どもたちやおかあさんに声をかけて、学校をつくっちゃおーっと。」
ちょうど、一年前の夏に祇園地区のお母さん達が同じようなことをしていたのを参考にし、『広島市安佐南区社会福祉協議会』というところと一緒に案を練って、いろいろな人たちに声をかけました。お手伝いをしてくれる人たちも必要なので、同じ地域の高校の生徒や民生委員さん、学校の先生、幼稚園の先生、ボーイスカウトなどにも声をかけました。
すると…、来るわ来るわ、第一日目に、なんと!子ども約80名余り、プログラムのお手伝いをするボランティア・民生委員さん40名余りと、合計100人以上の人たちが集まりました。お母さんは、びっくりして、目玉がとびだしてしまいそうでした。集まった数も多ければ、その内容も予想を遥かに越えたおもしろいものでした。あらかじめ決めたとりあえずのプログラムらしきものはあるのですが、子ども達はといえば、もちろんそのプログラム通りには動いてくれません。子ども達と初めて接するボランティアも同じです。突然子どもがいなくなったと思えば、道路を隔てた電気屋さんへ社会見学に行っていたり、プールに行けば、プールサイドで子ども達の監視をする民生委員さんがプールに突き落とされたり、川べりでお弁当を食べようと思っていたら、子ども達は、お弁当をほったらかして、いつのまにか服を着たまま川遊びをしていたり…、などなど、毎日がハプニングの連続でした。10数回の予定だったプログラムも回を重ねるごとに過激になり、ボランティアも子ども達もお母さんもみんなみんなとても仲良しになりました。
それから2年後の1983年6月4日、活動の積み重ねの中でものすごーく仲良くなったボランティアが十数名集まり、グループを結成することになりました。グループの名前は、子ども達が大好きなキャンプファイヤーのレクレーションソングの名前をとって安易に『ひゅーる ぽん』と決め、楽しく、ルンルンと夢いっぱいの活動を始めることになりました。
最初は、月一回の定例会と会報の発行、夏・冬・春休み学級や土曜保育の支援活動が活動の中心でしたが、元気いっぱいの仲間たちは、これだけで満足することなどとうていできません。「いつも頼まれたときだけ支援活動をするだけじゃなくて、あったかくておもしろい地域をつくるために自分たちでできることをどんどん考えてやって行こう!」と、まずはキャンプをすることにしました。このキャンプが、大成功。すると次から次へと新しい発想がうまれてきます。冬は、みんなでサンタに変装して、プレゼントをもって子ども達の家をまわったり、みんなでスノーボートを持って、山を貸し切りにして雪遊びをしたり、「よし、旅行にもいっちゃおう!」と九州や四国へ一泊二日の旅行へ行ったり、子ども達とボランティアとのキックベースボールクラブを結成したり…、子ども達もボランティアも大忙しの毎日です。さらに、活動の内容も幅広くなりました。子ども達との活動以外に、お年寄りに元気になってもらおうと老人ホームを訪問したり、地域に住む人たちに向けて映画会や講演会、ボランティア講座を企画したり、広島市全体のボランティアグループを対象にした研修会を実施したりなどなど、活動はどんどん広がっていきました。
そんな、私たちも1990年後半頃より、大きな壁にぶち当たることになりました。いくら、土日ごとに子どもたちのための余暇活動を繰り返しても、放課後にはひとりぼっちでいる子どもたちがいること、また学校に行けない子どもたちがいること…そんな子どもたちが増え続ける社会の中で私たちの行っている活動は本当に今の時代にぴったりの活動といえるのだろうか?
「本当に今私たちがすべきなのは、いつでも子どもたちが集まることができる、学校や家庭以外の場所で子どもたちがいきいきと過ごし育つ場じゃないだろうか。」そう考えた私たちは、新しい私たちの活動の在り方を考えはじめました。
そして、ボランティア国際年である2001年、私たちは多くの方々のご支援をいただき、「コミュニティほっとスペース」を設立しNPOとしての新たな歩みをはじめたのです。さらに、2002年には、地域にあった作業所の運営(現在名:ぽんぽん)も受け継ぐこととなり、大人の障がいのある人たちの社会参加の支援もはじめることになりました。
コミュニティリーダーひゅーる ぽんの運営するコミュニティほっとスペースは、これまでの私たちの歴史と活動をすべて含んだ、子どもたちの安心と育ちの場であり、障がいのある人たちにとっての社会生活を応援する場であり、さらに、まちづくりの拠点でもあり、ボランティアリーダーが育つ場となっています。
2013年には、こどもたちのコミュニティほっとスペースは、日本でも初めてのNPO法人の運営する児童福祉施設「児童発達支援センター」になりました。さらに、2018年3月には、認定NPO法人にもなりました。
私たちひゅーるぽんは、専門的な発達支援、社会参加支援を行いながら、子どもたち、障がいのある人たち、ボランティアリーダーとともに人の優しさや信頼を基点とした幸せに満ちた未来を創り出す活動を行っています。